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今月より当店のオンラインストアから選び抜いたタイトルをご紹介する特集をお届けいたします。
スクリーン越しに、無数の画像が消費されていく現代。
だからこそ、丁寧に編まれた「写真集」という存在は、私たちの五感に特別な体験をもたらしてくれます。
今回ご紹介するのは、イギリスで一冊一冊ハンドメイドのアートブックを制作するインディペンデント出版レーベル「Jane & Jeremy(ジェーン&ジェレミー)」の書籍たち。
Jane & Jeremyが送り出す本は、時を重ねながら、大切に手元に置いておきたくなるような愛おしさに満ちています。
そこにあるのは、作家の極めて私的な視点や、日常の断片を詩的に切り取った世界。
静寂やノスタルジー、目に見えない空気感までを描き出し、私たちの想像力を静かにかき立てます。
アートピースとしての佇まいを持つ、本棚に迎え入れたくなる5冊をご紹介します。
Ask Alexa When are we all gonna die tomorrow:)
Annie Collinge
「ねえアレクサ、私たちは明日みんな死んじゃうの?」――Annie Collinge (アニー・コリンジ) が息子のベッドの横で見つけたメモから生まれた本作。自身の息子を主人公に「架空の家族の日常」を創り出しました。
鏡や色水、玩具が散らばるバスルーム。眩いフラッシュが暴き出すのは、現実の遊びでありながら、どこか不穏で、どこか愛おしい、家族写真の枠を超えた未知の光景です。
妹・ミランダの詩と共に編まれた本書は、現実と虚構の境界線で私たちが忘れていた「無垢な世界の危うさ」を呼び覚まします。
I saw the man with a telescope.
Erin O’Keefe
3次元の立体を、カメラは強引に2次元の平坦な世界へと閉じ込める。
建築家でもあるErin O’Keefe(エリン・オキーフ)は、その時に生まれる視覚の「歪み」を逆手に取り、静かな視覚の実験を試みます。
スタジオの卓上に配置された、鮮やかに彩られた木片たち。私たちはそこに抽象絵画のような美しい平面を見出しますが、同時に粗く塗られた表面のテクスチャーや重なる影という「確かな立体の気配」に惑わされることになります。
「見ている世界」の不確かさを愛おしく愉しめる一冊です。
House of the Stray Dog
Cole Flynn Quirke
暗闇の中で見つける、静かなシェルター。本作はCole Flynn Quirke(コール・フリン・クワーク)が、20代の葛藤や不確かなアイデンティティと向き合った2年間の記録です。
「迷い犬の家」というタイトルが示す通り、自身のプライベートを剥き出しにしながら、どこか安心できる居場所を模索するように日記的な撮影は続けられました。暗室でネガを重ね、時にプリントを引き裂いて作ったコラージュからは、彼が自身の内面と執拗に向き合った皮膚感覚のようなものが伝わります。
直筆のサイン入りプリントが付属した、彼の人生の一部を分かち合うような一冊です。
Ossa
Kathryn Martin
今見ている何気ない風景のすぐ下には、遥か昔の記憶が眠っています。
Kathryn Martin(キャサリン・マーティン)は、自宅近くの丘にかつて存在した青銅器時代の集落をテーマに、風景と考古学が交差する静かな世界を紡ぎ出しました。
火打ち石や土器の破片、今も足元に咲く野生のハーブ。地層に眠るかつての営みを、彼女は写真という現像プロセスを通じて、現代の光の中へとそっと引き揚げます。
ラテン語で「骨」を意味するタイトル通り、土地の骨格と自身の魂が静かに共鳴する本作。松尾芭蕉の詩の精神にも通ずる、自然の儚さと力強さを内包した美しいアートブックです。
Luminous Mind
Daniel Fuller
プロサーファーでもあるDaniel Fuller(ダニエル・フラー)が、20年以上にわたり波の上から見つめ続けてきた海の記憶。
本作は、長時間露光によって捉えられた神秘的な水面の表情を、「青」と「赤(マゼンタ)」の2つの対照的なセクションで表現した写真集です。
激しくうねる混沌の赤と、深く静まり返る静寂の青。光の動きを抽象的に抽象化したそのイメージは、まるで海が持つ呼吸や、人間の内面的な感情の揺らぎそのものを映し出しているかのよう。海の二面性に深く没入できる、瞑想的なアートブックです。