無邪気な好奇心で世界を見つめる眼差しや、損得のない自由な創造力。
子どもという存在は、大人が見落としてしまう世界の美しさや、表現の原点となる視点を鮮やかに浮き彫りにします。
アーティストたちが「母」という立場から我が子や自然に向き合うとき、そこには単なる家族の記録を超えた、命の根本的な力強さや生き物としての本能が写し出されます。子どもの伸びやかな感性に触発され、自身の表現を更新していく彼女たちの試みは、見る者に「世界をどう捉えるか」という新鮮な問いを投げかけてくれます。
今回は、子どもという眩しい存在や身近な自然を通して、生きることの愛おしさと表現の歓びを描き出した4冊の作品集をご紹介します。
Equivalents. States of Existence
Cristina Dias de Magalhães
写真家である母の静かな風景写真と、3人の娘たちが自由に描いたドローイングが溶け込んでいる作品集。作家自身が抱える困難や心の揺れが、自然の造形と子どもの無邪気な線によってメタファーへと昇華されています。母としてひとりの人間として再生していく生命の美しさを教えてくれる一冊です。
また、視覚障害者向けの音声ガイドが用意されているなど、目で見ること・感性で捉えることの境界をゆるやかにひろげてくれます。
Instincts. Same but different
Cristina Dias de Magalhães
同じくCristina Dias de Magalhãesによる、娘たちの誕生をきっかけに制作された作品集。子どもの仕草や表情を捉えた写真と野生動物の写真を並べており、「人間もまた本能で生きるひとつの生き物なのだ」と気づかされます。本作は、親と子という濃密な関係性の中で育まれる愛と絆、そして一卵性双生児のような複雑で神秘的な個性の輝きを浮き彫りにしています。
JUNE
Annemarieke van Drimmelen, Jasper Krabbé
写真家の母と画家の父、娘のジュン。パンデミック下のギリシャの小さな島で足止めされた家族が生み出した一冊です。夫妻は「ただそこに居て世界を面白がる」ジュンに触発され、それぞれの作風を自由にひらくコラボレーションを試みました。母が撮影したモノクロ写真に、父が軽やかなペイントや言葉を重ねています。子どもの無垢な眼差しが大人たちの表現を触発し、不自由な日常を歓びへと塗り替えていく。本書には「世界を新鮮な目で見つめ直す」という豊かな気づきが詰まっています。
as it is
川内 倫子
子どもが生まれてからの3年間、部屋に差し込む光や道端の虫、我が子のやわらかい肌を素朴に捉えた写真集です。小さな子が庭で生き物と出会い、時にはその死に触れるような、暮らしの中のささやかな出来事が丁寧に並んでいます。これまで広く外の世界へ向けられていた写真家の眼差しが、再び身近な暮らしや足元の風景へと注がれる。淡々と過ぎていく時間の美しさが詰まった、優しい余韻が残る一冊です。