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今回は日本のグラフィックデザインの黄金期とされる1960年代から現代に至るまで、誰もが一度は目にしたことがあるデザインを手がけてきたデザイナーの作品集を紹介します。
グラフィックデザインはメディアの多様化により、情報伝達と美術の融合としての地位を確立してきました。今回紹介するデザイナーたちの作品は、常に新しいビジュアルコミュニケーションの在り方を模索してきたという点が共通しているように感じられます。 海外のデザインからの潮流や歴史的事象、流行などさまざまな要因が重なって生まれた特徴的なデザインたちをお楽しみください。
亀倉雄策のデザイン
亀倉雄策はまだデザインというものが一般的ではなかった時代に、初めてポスターに写真やイラストを取り入れるなど画期的なグラフィックデザインで日本経済に大きな影響を与えたデザイナーです。
躍動感溢れる陸上選手のポスターや日の丸が印象的な東京オリンピックのポスターなど、誰もが一度は目にしたことがある作品はダイナミックに写真を用いたものや構成主義的なアプローチが光っています。
本書はNikonのポスターシリーズや明治チョコレートなどの代表作をはじめ、戦後から1983年までの作品がまとめられています。
一覧すると現在でも使われているデザインが多いことがわかり、その普遍性に驚かされるのではないでしょうか。
色褪せないCIの数々をカラー図版で楽しめる一冊です。
仲條 NAKAJO
資生堂パーラーのパッケージや東京都現代美術館のロゴなどを手掛けたグラフィックデザイナー・仲條正義の1960年代後半から現在までの仕事を網羅する作品集です。パッケージやロゴデザイン、雑誌の表紙やポスター、挿絵等の主な作品を年代順に掲載していますが、これまでの集大成にならないようストーリー付けなどの説明テキストは編集委員を務めた葛西薫氏と服部一成氏によって意識的に省かれています。
元々は絵描きを志しておりデザインの中に絵画的な要素を取り入れつつ戦略的にデザインが構築された作品群は説明がなくともすべてが新しく同時に懐かしく感じ、圧倒されます。
KASAI Kaoru 1968ー図録 葛西薫1968
日本を代表するアートディレクター・葛西薫の作品集です。2007年に開催された「葛西薫1968」の展示作品を中心に、デザイナーとしてデビューしてから手掛けたCI、装丁、ロゴ、プロダクトデザイン、そしてSUNTORY烏龍茶、SONYのウォークマンなど広告の仕事や、高校時代のレタリング習作など含む500ページ以上の作品をフルカラーで収録します。
時系列に掲載された作品とその間に収録されたインタビュー記事からは華やかな仕事以前には地道な積み重ねがあったこと、自身の40年間に渡る経験を若い人に見て欲しいという後輩へのメッセージの意図が感じられます。
デザインノート No.86
無印良品のアートディレクションや蔦屋書店、GINZA SIXのVI、JAPAN HOUSEの総合プロデュースなど多岐に渡る活動で日本のグラフィック界の第一人者として知られるアートディレクター、原研哉氏。
本書はデザインノートNo.86での特集に2019〜2020年の仕事を増補し書籍化したものになります。多彩な仕事を8つの章に分けて様々な企業やブランドの仕事をまとめるほか、コロナを経た未来のデザインへの展望まで綴られています。
「成熟社会」と形容される現代においてのビジュアルコミュニケーションの在り方など、デザインの可能性を見直すきっかけとなる一冊です。