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唯一無二の個性を持ったKarel Martensの作品をご紹介

17th May 2021

BOOK REVIEW

オランダのグラフィックデザイナー、Karel Martensはブックデザインや建築関連のデザインのほか、おもちゃのパーツや工具の部品、鉄の破片など日常の中で見つけてきた“ファウンド・オブジェ”を用いた印刷作品にも取り組んできました。
今回はインキの層を重ねるごとに何らかの効果が生まれることこそが印刷の本質であり、その根源的なところに魅せられたという Martensの唯一無二の個性を持った作品をまとめた書籍を紹介します。

Re-Printed Matter

Karel Martensが手がけた仕事の中からブックデザイン、切手、標識、テレフォンカードなど印刷物に焦点を当ててまとめています。インクや油絵具などの描画材を用いて描画し、その上に紙を乗せて圧力をかけることによって版に描画したイメージを紙へ転写するモノプリントの採用や、鮮やかな色彩と幾何学的な構造などMartensを象徴するデザインが印刷物に落とし込まれています。実験的な印刷作品をはじめ、実際の仕事としてのデザインが凝縮された作品集です。

Tokyo Papers

キュレーションを担当したPierre Leguillonが東京で見つけた古い使用済みのたばこ買受票をKarel Martensが譲り受けたことから始まったプロジェクトをまとめたものです。たばこ買受票と自身のグラフィックを融合させることを思いつき、表面にモノプリントを施して制作された作品はフランス装のような織り込まれる形で実際のサイズに合わせて伝票の表裏を演出しています。
昭和中期に使われていた複写伝票には今は無い銘柄の煙草の名もあり、希少となった裏カーボンが醸し出す郷愁とMartensの鮮やかなプリントの対比を楽しめる一冊です。

Karel Martens Motion

ミュンヘンをはじめ、海外6都市を回った展覧会 「Motion」をMartens自身の監修とJulie Peetersのコンセプトデザインによって編集したものです。本展のために制作された多色使いのアイコンで構成された壁紙、ビデオ投影などのコミッションワークに加え、既存の作品も再構成しファウンド・マテリアル(見つけてきた素材)のモノプリント、紙レリーフ、ビデオ、初期の光学作品など代表的な作品も収録しています。Martensのデザインやそのアプローチの元を辿ることができる内容です。

Still Moving

2018年10月から2019年2月まで韓国ソウルのPlatform-L Contemporary Art Centerにて開催された展覧会に際して出版された図録です。Sang Un Jeonのキューレーションに依って開催された同展では、1990年よりデザインディレターを務める建築誌『OASE』をはじめ、60年に渡るキャリアの代表的な作品を紹介していました。アナログやデジタル、写真とテキスト、数学的思考や感性など様々な表現方法を自由に行き来するMartensが、今もなお新たな試みを続けていることを感じる一冊です。

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