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現代美術を代表するアーティスト、Gerhard Richterの作品集をご紹介

3rd August 2022

BOOK REVIEW

具象と抽象を行き来しながら絵画表現の可能性を探求し続け、ドイツ最高峰の画家と称されるGerhard Richter。
2022年から2023年にかけて日本で16年ぶりとなる大規模個展が東京国立近代美術館、豊田市美術館で開催されます。
近年の最重要作で日本初公開となる《ビルケナウ》(2014)を始め、フォト・ペインティング、カラー・チャート、アブストラクト・ペインティングなど様々な技法を駆使しながら「人間がものを見るとは、どういうことか」を問い続けてきたRichterの作品集をご紹介します。スタイルレスと言われる幅広い表現をぜひお楽しみください。

 

Gerhard Richter: Abstraction

Gerhard Richterの抽象画作品を検証した作品集。抽象的な手順と工程に焦点を当て、世界各地のコレクションに収蔵されている作品から選んだ80点を収録しています。Richterの抽象画は1960年代初頭に始まり、アメリカを代表する現代音楽家John Cageにインスピレーションを受けたグレーのモノクロ絵画シリーズ「グレイ・ペインティング」、絵具の筆致と塗布そのものを主題として扱った「InPainting」、画材店で見かけた色見本帳をもとにさまざまな色のチップをモザイクのように並べた「カラーチャート」のシリーズ等があり、1976年以降は絵筆、スキージ、パレットナイフを用いて絵具を塗布し、意識的な決定と偶然性に任せたプロセスを行き来しながら抽象作品を制作しています。カラー図版を通して幅広い表現の奥に潜むコンセプトに迫りつつ、今日まで続くRichterの絵画を巡る探究心を垣間見ることができる一冊です。

 

Life and Work

Gerhard Richterの作品群を回顧的かつ包括的に収録した一冊です。美術史家のArmin Zweiteが、旧東ドイツでの初期の美術教育や西ドイツでのその後の作品などGerhard Richterのキャリアをあらゆる段階から紹介していく構成となっています。白黒のフォトペインティング、カラーチャート、ガラスや鏡を用いたインスタレーション、静物画、抽象絵画のほか、写真や新聞の切り抜きを用いた大判シリーズ「Atlas」や左翼テログループの生死を記念したシリーズ「October 18, 1977」を含む250点以上の図版を収録。
60年間に渡り制作されてきた作品を一覧することで、Richterが「イメージ」というものに抱いてきた関心の強さを改めて感じることができます。

 

Gerhard Richterʼs Birkenau Paintings

Gerhard Richterの近年の最重要作品であり、日本初公開でも話題となっている4点の大型抽象絵画作品「ビルケナウ(Birkenau)」を制作プロセスから紹介する作品集です。本作は1944年にアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のユダヤ人捕虜のうち、ガス室と火葬場の運営を任された「ゾンダーコマンド(特殊任務)」が現地の様子を密かにカメラで捉えた4枚の写真を写実的に油絵具で基礎として描いたのち、数プロセスを経て何層にも渡り塗り重ねて制作されています。Richterは1960年代以降ホロコーストという主題に何度か取り組もうと試みたものの、適切な表現方法を見つけられず断念してきました。2014年にこの作品を完成させたことで自らの芸術的課題から「自分が自由になった」と感じたと語っているように、本作は達成点であり、また転換点にもなった作品です。「ビルケナウ」の制作に影響を与えた歴史的文脈と現代美術的文脈を探る、ドイツ人美術史家のベンジャミン・H・D・ブクローによるエッセイ「Amnesia and Anamnesis」も収録。オリジナルの写真から抽象画として仕上がるまでの段階を視覚的に解説しています。

 

Gerhard Richter

パリにあるルイヴィトン財団が運営する美術館The Foundation Louis Vuittonが所蔵するGerhard Richterの作品をまとめたものです。
Richterの作風は「style-less(スタイルレス)」と言われるほど、表現手法やコンセプトが多彩であり、同じく20世紀絵画の巨匠であるパブロ・ピカソらの系統に位置づけられています。人物を描いた具象画からカラーチップを並べた抽象画、伝統的なキャンバスを支持体とした平面から巨大なガラス板を使った立体まで、幅広いスタイルが同時並行的に展開されてきました。本書は自身が描いた抽象画を複雑にデジタル加工してプリントした「Stripe」などの代表作をはじめ、ラッカー塗装による近年の作品、Dieter ScwarzによるRichterへのインタビュー、Philippe Dagenによるエッセイなどを収録しています。

 

ゲルハルト・リヒター

東京国立近代美術館、豊田市美術館にて開催される過去最大の個展の公式図録です。ホロコーストを題材とした日本初公開の「ビルケナウ」(2014年)をはじめ、初期のフォト・ペインティングからカラーチャート、グレイペインティング、アブストラクト・ペインティング、オイル・オン・フォト、そして最新作のドローイングまで、Richterがこれまで取り組んできた多種多様な作品を紹介します。
Richterは基本的に制作した作品をすぐ手放しており、今回の出品作は1992年の《アブストラクト・ペインティング》(CR 778-4)をはじめ、彼がずっと手元に置き続けている作品が核となっています。特定の鑑賞順に縛られず、自由にそれぞれのシリーズを往還しながらキーワード解説や論考、豊富な記録写真、海外の重要な論文やインタビュー等を通じてその幅広い表現を読み解くことを試みた本展をまとめた一冊です。

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