CONTACT NEWSLETTER

美術と工芸の狭間に位置するテキスタイルをデザインに昇華した作品集をご紹介

29th March 2023

BOOK REVIEW

縦糸と横糸の組み合わせによって作られた織物、布地を意味するテキスタイルは世界各国、あらゆる地域、民族、伝統、文化、風土に応じて存在しています。美術史の文脈で登場するようになったのは市民文化が花開く19世紀以降。アーツ・アンド・クラフツ運動やアール・ヌーヴォーなど応用美術の分野における芸術性、装飾性が意識されるようになっていきました。
今回は21世紀を代表するテキスタイルアーティストであるAnni Albersを中心に、美術と工芸の狭間に位置するテキスタイルデザインについて特集します。Anniは実用的なテキスタイルデザインとして織を捉え、少ない色数で垂直線、水平線など経糸と緯糸との関係から導かれる無理のないシンプルなデザインを素材をできるだけ絞り込み、簡潔な織構造で表現してきました。1925年に結婚したJosef Albersの影響もあり、限られた材料を徹底的に研究し素材の特性を生かすことを理念としています。加えて織機で作品を描き、鮮やかなテキスタイルに文章の断片や写真の一部を織り込む作風が特徴的な新進気鋭のアーティスト、Marie Hazardの初作品集も合わせてご紹介いたします。
伝統を継承しながら、新たな可能性を感じることもできるテキスタイルデザインをお楽しみください。

 

CAMINO REAL

21世紀を代表するテキスタイルアーティストであり版画家Anni Albersによる作品集。2019年にニューヨークのギャラリー「David Zwirner」で開催された展覧会に伴い刊行されたもので、本書では長い年月を経て再発見された壁掛け作品「Camino Real」にまつわる内容が詳細にまとめられている。「多角的な実践」をテーマにAnni Albersのテキスタイル作品を紹介し、壁掛けや織物、紙を使用したさまざまな作品を収録。テキスタイルを先駆的に芸術作品として取り入れ、同時に大量生産できるデザインとしても関心を持ち続けたその文脈とモチーフへの探求心を感じることができる一冊。

 

 

Equal and Unequal Nicholas Fox Weber

20世紀を代表するテキスタイルアーティストであり版画家のAnni Albersと抽象画家Josef Albersのビジュアル資料集。ドイツのバウハウス時代からアメリカのブラック・マウンテン・カレッジ、コネチカットでの活動など、歴史と仕事を750点のカラー図版、彼ら自身が撮影した写真、未公開資料と共に掲載するほか、Fox Weberによるそれぞれの作品の要素を掘り起こしたエッセイを収録。夫妻の人生とキャリア、豊かな想像力を辿るモノグラフとなっている。

 

 

MARIE HAZARD

フランス人アーティスト、Marie Hazardの作品集。織機で作品を描き、鮮やかなテキスタイルに文章の断片や写真の一部を織り込み、「世界の中に存在し、その中を移動するダンスを記録」するという作風が特徴的。初作品集である本書は、2018年から2022年にかけて開催された展覧会より約150点の作品を集め、美術史家のOlivier Berggruenによるエッセイ、アーティストのGeorge Tiger Liuとの対談を収録している。

 

 

On Weaving: NEW EXPANDED EDITION

20世紀を代表するテキスタイルアーティストであり版画家のAnni Albersの作品集。織物という芸術とその歴史、道具と技術、現代のデザインに及ぼす影響ついて豊富な図版で分かりやすく解説した一冊。手織りから機械織りへの推移を解き明かし、素材を意識することやデザイン上の問題を実際の作業を通じて解決する際に起きる創造的なひらめきの重要性を強調する。初版の刊行から60年近くの月日が流れたことを受けて、原書のモノクロの挿絵にフルカラーの写真、エッセイを追加し内容をアップデートした拡張版として仕上がっている。

 

ALL
  • INDEX
Totop